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社長である義父は理系大学卒の技術屋さんでした。

 経理や総務を担当する義母は会社の要。

義兄は理系大学卒でありながらも体育会系のノリで営業もこなし次期社長らしく会社の顔です。

夫だった人は性格の可愛さもあって、いつまでも社長のボン扱いで工場で使いっぱしりさせられていました。

 

義母は仕事人としても優秀でしたが 地域活動にも活発な方で 工場の事務所にはいつもご近所の方々が屯していました。

そして義姉は自宅で書道教室を開いていました。

お嬢様系短大卒でおっとりした大人っぽい美人さんの義姉は義母の自慢で、二人はとても仲良しでした。

義母の社交場でもある1階。

義姉の教室でもある3階。

そんなビルの2階でワタシだけが鬱々とつまらない毎日を過ごしていたのです。

 年上の奥様達や生徒さん達に気の利いた挨拶ひとつできない嫁。

 手に職のひとつもなく、かといって家事が得意ってわけでもない嫁。

でも、婚家の人はみんなが「イイヒト」だったので

なにひとつ嫌みを言われることもなく 指図のひとつも受けたことはありませんでした。

 

 イイヒトなのに好きになれない。 だったら、悪いのは自分。

 何も出来ないコンプレックスで被害妄想に陥ったワタシは、 出来すぎた家族の中で一番身近で唯一対等に話すことが出来た夫にあたりました。

 理不尽な怒りをただ受け止めることしか出来なかった夫に 申し訳なかったなと、今なら思えます。

 でも当時のワタシにとって 自分の感情を正当化するためには 夫を敵と思うしかなかったのです。